【天・気になるシゴト】ワイン作りは天気の影響が大!そのワケとは

東京・深川でワインを醸造している「深川ワイナリー東京」の上野浩輔さんに、ワイン造りと天気の関係について伺いました。これまでのお話から、ワインの原料となるブドウは大いに天気と関係がありそうですが、どのようなことが気になるのでしょうか?

上野浩輔さん

(1) お仕事の中で天気はどの程度重要ですか? 10段階評価でお願いします。

8割ですかね。あと2割は人の手です。醸造に関していうと天気は殆ど関係ないですが、収穫に大いに影響あるんですよ。台風や雨・湿気・気温などが気になりますね。

雨が少ない・湿気が少ないことがブドウにとっては良いといえます。とにかく湿気が少ないのがなによりなので…というのも、湿気が多いとベト病になりそれがどんどん感染していくんです。雨露が次から次へと葉に病気を移していくので、ベト病の葉を1枚見つけたら徹底的に排除しないとブドウが全滅してしまいます。とくに発見から1週間以内に梅雨時期や秋雨前線がくるとなると、一刻を争うほどの問題で早急に対処しないといけないんです。

ただ、今年のように暑すぎると害虫(カメムシなど)が大量発生する可能性が高く、葉を全部食べてしまうハスモンヨトウなども増えるんです。暑すぎず雨が降りすぎず、ちょうどよいのが一番なんですが、お天気ばかりはなかなかね。

収穫時期に気になるのは「台風」です。台風がブドウの収穫時期と重なると大変です。本来は10月半ばに収穫するはずのブドウを、台風が接近しそうだということで初旬に収穫したことがありました。そんなに早く収穫すると色が出てない、酸度が高い、ワインにしたら酸っぱくなる…三拍子揃ってしまったんですよ、悪いほうに。

収穫時期の台風はとにかく影響が大きいので、中長期予報や、直近の台風情報をこまめに見ながら、早めに摘むかどうか判断します。どこまで「我慢」できるかもありますが、早く摘めばワインには不向きなブドウになってしまう。

以前、台風でブドウの樹を支えるポールが倒れてしまって、ブドウが傷ついて使い物にならなくなってしまったことがあります。実は水浸しにもなりましたし。だから、ポールが倒れてしまうくらいだったら思い切って早めに収穫しよう、という判断をしなければならないんです。一生懸命育てたブドウをなぜこのタイミングで収穫するんだ?と生産の立場からしたら辛い決断を迫られます。台風との闘いは尽きないですね。

(2)天気について、何を・一番・どのタイミングで、知りたいですか?

先ほどの収穫時期の台風の状況もそうですが、ブドウが届く1週間前くらいに、刈り取る前にどんな気象状況になるのか知りたいですね。天候が収穫に影響しますし、ここに来たときのブドウの糖分にも影響するんです。天気がよければ糖分が高いですが、雨が降ると薄まることがありまして…見かけ上はパンパンに膨れて瑞々しくて、すごくいいブドウに見えるんですけどね。

(3)天気はいつ、どんなときにチェックしますか?

今年のブドウの出来具合という意味では、毎日チェックはしています。ブドウの契約農家さんがある地域の天気とか。もちろん東京の天気も見ますけれど。特に気になるのは日照量・気温・風ですね。風速が17mを越えたら心配になります。風速25mなんて予報が出たら、「あー、ブドウはどうしているんだろう?」ととても気になるし、農家さんに連絡を入れたりします。

(4)天気によって苦労していること、工夫していることは?

ブドウの出来具合によって、最終的には仕上げのベストを尽くすことです。その年に出来たブドウを見て、食べてみて仕上げについて判断します。過去の経験をすべて頭の中に蓄積してありますからね、それらも全部引っ張り出して決めるんです。

(5)今までで一番「天気に悩まされた」ことは?

赤ワインを作るためのブドウに色がついていなくてロゼにせざるをえなかったときですかね。本当にショックでした。そればかりは自分で変えられない。それでもそれを受けてプロの仕事をしなければならないと思っていますけれども。


毎年気象状況は変わりますし、ブドウの出来具合も変わる。それを受けてプロの仕事をする…確かに気象状況はめまぐるしく変わっていますから、大変なことも多いですよね。ワインにとっても人間にとっても、最適な気象で穏やかな毎日を…と思わざるを得ません。上野さん、お話ありがとうございました。

取材協力:深川ワイナリー東京 上野浩輔さん

http://fukagawine.tokyo/

(アール)