■虫だって暑いのはツライのです
9月に入って朝夕は幾分過ごしやすくなってきましたね。夏のセミの鳴き声がいつの間にか、秋の虫たちの声に変わっていることに、お気づきでしたか?
「え!虫!それは苦手〜」という方も多いかと思いますが、ここでは秋の夜をしっとりムーディにしてくれる「鳴き声」について書かせていただきたいと思います。
鳴く虫と聞いて思い浮かぶ代表は「スズムシ」でしょうか?
■虫たちにとっては命がけ!
虫が鳴くにも最適な気温があって、暑すぎたり寒すぎたりすると鳴けなくなるんです。鳴く種類の虫たちにとっては「鳴く」という行為は、オスがメスを惹きつけるため、つまり次に命をつなげるためのとても大切な行為。つまり死活問題なんですね。環境的な問題・ヒートアイランド現象や、地球温暖化によって、虫たちが子孫を残せないまま絶滅してしまう危惧もあるんです。
猛暑・酷暑と年々話題になっていますが、この暑さに悩まされるのは人間だけじゃなかったんですね。裏を返せばつまり、虫の鳴き声が聞こえるということは、ヒトにとってもいい状態、とも言えるかもしれません。コオロギやスズムシの鳴き声に癒されるような気がするのは、案外、気のせいだけではないのかも。
■ズバリ!最適な気温と虫の関係とは・・・
では、一体どのくらいの気温が虫(とヒト)にとって良い状態なのか?
童謡『虫のこえ』に登場する鳴く虫たち(スズムシ、コオロギ、クツワムシ、ウマオイ、マツムシ)のうち、今回は鳴く虫の代表?といっても過言ではない「クツワムシ」と気温の関係を紹介します。
・バッタ目 クツワムシ科
・体は緑色または褐色で、大きさは5~6cm
・8~10月にかけて「ガチャガチャ」と鳴く
・新潟県を北限とし、鹿児島県まで分布
※多くの地域で絶滅の恐れがあり、レッドデータブックに掲載されている
このクツワムシ、実は鳴く活動(以下、発音活動)には最適な気温があります。その気温は「24~26℃」で、より長時間の発音活動を可能にすることが調査によりわかっています(2005年,清島,未発表)。長時間の発音活動は、メスをひきつける時間を長くすることになるので「24~26℃」というのはクツワムシにとって「出会いの気温」といえます。
<クツワムシのオス5匹を元に調査した、気温と発音活動時間>
さて、今年の夏は暑く夜間気温が25℃を超える熱帯夜が続き、寝苦しい思いをされた方も多かったのではないでしょうか。そして、クツワムシをはじめとする「鳴く虫」も私たちと同じように、暑く苦しい夏で命のリレーどころではなかったでしょう。
今後、環境変化によって気温が上昇し続けると、鳴く虫たちの発音活動が制限され声が聞けなくなってしまうこともあるかもしれません。気温の変化は鳴く虫たちにとって、死活問題といっても過言ではないのです。虫が苦手な方も多いと思いますが、虫たちも結構頑張ってるんだな、ってことをちょっぴり知っていただけたら嬉しいです!
こんにちは。キヨです。童謡「虫の声」の歌詞通り、クツワムシは本当に「ガチャガチャ」と大きな声で鳴きます。学生時代、自宅で2~3匹を家で飼っていたときは、うるさくて家族からクレームが。。。童謡に歌われるくらい昔は一般的だったであろう、クツワムシ。今は絶滅危惧種に指定されている。これは本当に残念なことです。昔のようにクツワムシの鳴き声が一般的に聞ける日が戻ってくるといいなと思います。
(2016/9/19 00:00更新)