雨の日、日差しが強くて出掛けたくないなぁという日、忙しさから束の間の休憩を求めている時、なんだか気分が沈んでいる時。
「そうだ、コーヒーでも飲もう」
そんな気持ちになることはありませんか?
誰かがそばにいたらもう1杯淹れて……と、コーヒータイムを一緒にとるのも良いものです。
コーヒーは、淹れる時間も飲む時間も私たちの気持ちを少し落ち着かせてくれます。
時には癒しになることも。
「もっと美味しく淹れられるようになりたい。」
そう思い、専門家の元を訪ねました。
お話を伺ったのは、珈琲焙煎士の小野裕史さんです。
▲小野裕史(おのひろし)さん。新卒でコーヒーに特化した飲食店に就職。在職中にコーヒー豆の奥深さに興味を持ち、自らスペシャルティコーヒー豆専門店を開業。現在は、カフェやオフィスコーヒーの卸売販売を中心に事業を展開。コーヒー豆販売事業の傍ら、企業向けのコーヒー教室なども行っている。
淹れ方の基本
今日は基本のペーパードリップでの淹れ方をお届けします。
それでは小野さん、お願いします!(以下、カギカッコ内は小野さんの言葉)
「ペーパードリップには、一般的に中挽きくらいの豆が合うと言われています。コーヒー豆は15g、お湯は150cc程度が1人分の分量として一般的です。抽出時間は2〜3分ほどを目安にします。
まず、粉にしたコーヒー豆を計量カップでフィルターに入れ、容器ごと揺すって平らにならします。
指で押さえるなどしないで、均一にふんわり整えるだけでOKです。」
「準備が整ったら、全体にお湯をゆっくりと注いでいきます。
コーヒーを注ぐ容器は、ガラスのポットなど透明なものだと抽出したコーヒーの量が見えてわかりやすいですが、マグカップなど中が見えないカップを使う場合も、時間を測っていれば抽出量の目安にもなるので問題ありません。
全体にお湯が行き渡ったら、まず30秒ほど豆を蒸らします。コーヒーの香りが部屋の中に広がります。
蒸らせたら、再びお湯を注いでいきましょう。中心から少しずつ渦を描くようにします。一番外側までいくと水っぽくなってしまうので、直径の半分くらいまでのエリアを目安にゆっくり注いでいく感じです。
抽出しているとコーヒー豆とお湯、コーヒーが合わさって膨らんできます。ふくらみが大きくなったら、少ししぼむのを待って、またお湯を注ぎます。」
時間と分量
「時間の目安としては、蒸らし30秒、抽出2分ほどのイメージです。
コーヒーの粉の量が少ないと淹れにくいので、2人分くらいの分量で多めに作るのもおすすめです。分量は個人の好みがありますが、2人分で淹れるときは1人分の粉の1.8倍程度という感じで1人分よりはやや減らしても十分美味しく淹れられます。
味の濃さは粉とお湯の分量のバランスで決まります。抽出するときにお湯を注ぎすぎて薄くなってしまうと元には戻せないので、気をつけましょう。濃い分には、後からお湯を加えて調整ができます。」
自分好みの1杯を探る
「日々コーヒーを淹れながら、自分好みの濃さを探っていくのも楽しいですよ。
1人分の粉の分量は15gほどが一般的ですが、しばらくは毎回少しずつ異なる分量で試してみて、その中からお気に入りの濃さを見つけられると自分にぴったりのコーヒーが淹れられるようになります。
時間も基本の長さから調節して、自分に合った抽出時間を比べてみても。ただし、ゆっくり淹れすぎると豆の雑味まで抽出してしまうので、その点は注意してやってみましょう。」
挽きたての香りを自宅で
コーヒーの魅力である香り。
自宅で淹れる時間にもう少し余裕がある人は、豆を挽くところからやってみるのもおすすめと小野さんは語ります。
「粉になったコーヒーは表面積が豆の1,000倍ほどになります。そのため湿気を吸いやすく香りが飛んでいきやすいのです。香りを思いっきり楽しみたいのであれば、淹れる直前に粉にするのが理想的です。
さらに言うと、美味しいコーヒーを淹れるには、豆を均一に挽くことが重要です。手で弾くタイプもありますが何十回も取手を回さないといけないので、大変に感じる方には電動をお勧めしています。最近は、手頃な価格の電動グラインダー(コーヒーミル)も販売されているのでチャレンジしやすいですよ。」
煎り方、産地で変わるコーヒー
基本の淹れ方と香りのことがわかったら、コーヒー豆の種類も気になってきました。
どんな違いがあるのでしょう。
「違いには、大きく2つあります。1つは煎り方、もう1つは産地です。
コーヒー豆は生の状態からローストする(火を入れる)ことで独特の香りが生まれます。
『深煎り』は苦味とコク、『浅煎り』は酸味やさっぱり感(フルーティさ)が味わえます。中煎りがその中間です。
日本で飲めるコーヒーはブラジル、グアテマラ、コロンビアのものが主流ですが、最近ではインドやアフリカをはじめとする新しい地域の質の高いコーヒーも流通しています。原産国による個性の差があるので、コーヒーで世界旅行をするような気持ちで楽しむこともできます。
産地の違いがより表れるのは浅煎りです。味の多様性を楽しみたかったら、ぜひ浅めの焙煎豆を選んでみてください。」
コーヒー豆は焙煎してから1ヶ月程までが一番美味しい状態なのだそう。密封していても徐々に劣化はしてくるので、飲みきれる量を買ってくるのもポイントとのことでした。
コーヒーとの時間を楽しんで
最後に、小野さんのとっておきのコーヒーの楽しみ方を伺いました。
「日常遣いのコーヒー豆でも、外で飲むとまた違った美味しさがあるなぁと思っています。暑い季節が始まっていますが、山の上など少し高い場所に行くと涼しい時間もあります。山の上で淹れても良いですし、自宅で淹れたコーヒーをポットに入れて持っていくだけでも十分。そこで飲む自分のコーヒーは最高なんです。
コーヒーを淹れるという作業は、思いの外リフレッシュ効果があると感じています。良い気分転換にもなります。
なにより、自分で淹れると好みにカスタマイズできるのが嬉しいものです。
分量の調整や豆を変えてみるといった変化もつけられるので、コーヒーを淹れる時間を色々と楽しんで欲しいと思っています。」
暑い日は、涼を運んでくれるアイスコーヒーも恋しくなりますね。
季節ごとにもいろいろな楽しみ方があるコーヒー。
美味しい淹れ方を教わったので、ますます楽しめそうです。
忙しい毎日の中でも、コーヒータイムで自分時間を作ってリラックスしたいなと思います。