灼熱地獄だった夏~2018年の気象を振り返る③

2018年の気象を振り返る記事、第2弾は連日の猛暑について。記録更新のニュースが続き、救急搬送される人も急増。暑さが生命の危機を感じさせるほどでした。いったい、どんなことが起こっていたのでしょうか?今回はたけねこ気象予報士の解説です。


2018年の夏は記録的な猛暑が各地を襲った

「命の危険にかかわる暑さ」「災害級の暑さ」など、異常な暑さを切実に伝える様々な言葉を連日のように耳にし、また、暑さ対策や熱中症対策が昼夜を問わず大切であることが身をもって感じられた今年の夏。東日本と西日本では、特に7月中旬以降に「記録的な猛暑」に見舞われました。では、どれくらい“記録的”だったのでしょうか。数字で見てみたいと思います。

■7月の月平均気温の記録
東日本は、平年より2.8℃高い(7月としての第1位を更新)
西日本は、平年より1.6℃高い(7月としての第2位タイの記録)
全国の気象官署の53地点で、高い方から1位の値を記録(タイを含む)

▼日最高気温の記録
熊谷(埼玉県)で、41.1℃を観測し日最高気温の歴代全国1位を更新(7/23)
アメダスの108地点で、通年の日最高気温高い方から1位の値を記録(タイを含む)
中条(新潟県)で、40.8℃を観測。北陸地方で統計史上初めて40℃以上を記録

▼主要都市の最高気温の記録(一部抜粋)
仙台 37.3℃(観測史上1位)
東京 39.0℃(7月として2位)
横浜 37.2℃(7月として1位)
名古屋 40.3℃(観測史上1位)
新潟 39.9℃(観測史上1位)
富山 39.5℃(観測史上1位)
京都 39.8℃(観測史上1位)
大阪 38.0℃(7月として1位)
岡山 38.1℃(7月として1位)
松山 37.4℃(観測史上1位)
福岡 38.3℃(観測史上1位)

ざっと並べてみても「観測史上1位」が続出していることが一目でわかるほど、まさに記録ずくめの猛暑でした。(気象庁調べより/画像:気象庁HP)

7月の平均気温の平年差

では、なぜ今年は“記録的”な猛暑となったのでしょうか?
毎年夏には太平洋上の「太平洋高気圧」が西に張り出し日本付近を覆います。地上天気図で目にする機会や、天気番組などで耳にする機会も多い、おなじみの“夏の高気圧”です。今年は、この太平洋高気圧の日本付近への張り出しが平年より強まり、さらに、上空の高いところ(高度10,000m以上)に出現するチベット高気圧が大陸から日本付近まで東に張り出していました。

これらの2つの高気圧が上下に重なって厚みが増した巨大な高気圧(=勢力が強い高気圧)となり、強い下降気流(=晴天をもたらす要因の一つ)が発生し、これによりギュッと圧縮された空気の温度は上昇します(=断熱昇温)。また、下降気流では雲は発生しないため(逆の上昇気流は雲を作る)、地上付近は雲にさえぎられることなく夏の強い日差しが照り続け、気温はグングン上昇。さらに、このような気象条件が長く続いたため記録的な猛暑となりました。

チベット高気圧が日本付近に張り出し続けた理由として、北半球の上空を取り巻く偏西風が、日本付近で北に大きく蛇行し続けたことが挙げられており、地球規模のスケールの大きい大気の流れが影響しています。このような現象は、日々の天気のようには変化しないため、しばらく持続することがあります。またこのほかにも、地球温暖化に伴う気温の上昇傾向が続いていることが影響していると考えられています。(気象庁HPより)

巨大な高気圧が日本付近に出現

梅雨前線の活動の活発化や台風による大雨など、顕著な自然現象は人命をも奪うことがあります。ここ近年は「過去に経験したことがない大雨」の発生も目立っていますが、これからは「暑さ」から命を守る意識も必要です。そして「災害ともいえる猛暑」に対しても、周囲の方への気配りや声がけなど、お互いに支えあう「共助」がとても役立つことを教えられた今年の夏の猛暑でした。


たけねこ予報士、ありがとうございました。
「暑い」という言葉を発する回数も、平年比200%だった気がしますよね。毎朝天気予報で気温を見るのが辛くなるほどの猛暑でした。たけねこ予報士も書いているように、暑さから命を守る意識の必要性を強く感じた夏でもありました。2019年の夏はどのような夏になるのでしょうか。身の安全を守るためのしっかりとした対策や予防ができるよう、コラムでも役立つ情報をお届けしていきたいと思います。

(アール)