降(ふ)らずに降(お)りる、霜の話

永遠に終わらないんじゃないかと思えるような猛暑、その後の厳しい残暑や大雨、台風と「暑い時期」の名残をいつまでも感じていましたが、暦の上では11月7日に立冬を迎え、街にはクリスマスのデコレーションが見られるようになりました。初霜のニュースも北から順に届くようになり、年末に向けて冬の色が濃くなっていきそうですね。初冠雪・初霜というと「冬の頼り」ですが、今日は11月「霜月(しもつき)」にちなんで霜のお話です。

■雨や雪は「ふる」、霜は「おりる」

気象庁のホームページ「霜に関する用語」の欄を見ると

「霜が降る」× → 「霜がおりる」
「霜がある」× → 「霜がおりる」

これが、いわゆる「天気予報などで用いる表現」となっています。なぜ雪は「ふる」で霜は「おりる」なのでしょうか。これは霜のなりたちに関連しています。

「霜」は気温の低下により空気中の水蒸気が水にならずに昇華して氷の結晶となって付着したもの。雪も霜も水分が凍って「結晶化」したものですが、これが空でできたか、地上の空気中でできたかによって呼び方が変わります。ではどんな条件の時に「霜がおりる」のでしょう?

*気温が4℃以下であること…0℃ではないのはなぜ?
…気温は地上150cm程度のところで計測されているので「気温4℃以下」だと地面付近はもっと低い可能性があるため。

*風が弱いこと…風が吹いているほうが寒そうなのに?
…風が空気をかき回す役目をになって、地面付近の気温を氷点下になりにくくすることがあるため。

*前夜の天気が晴れであること…天気が良いと気温が高そうなのに?
…雲が蓋の役割をしてくれて暖かい空気が逃げない…つまり「雲という蓋がない晴れた日は、暖かい空気が放出される(逃げていく)ので冷える」。いわゆる「放射冷却」です。

*湿度が高いこと
…霜は水分の結晶です。空気中の水分が多くないとできにくい、というのは納得です。

■霜の表現

霜の程度や時期によって、気象用語では下記のように表現されています。

弱い霜 植物の葉などの限られた部分にしか認められない程度の霜。
強い霜 畑の植物や地面が一面に白く見えるような霜。
初霜 秋から冬にかけて初めておりる霜。
早霜(はや霜) 秋の季節外れの早い霜。農作物に被害が出ることがある。
晩霜(おそ霜) 晩春から初夏にかけての霜。農作物に被害が出ることが多い。

うっすらと白く凍った葉などを見ると美しくもありますが、農作物への被害、いわゆる「霜害」などはないほうが良いですよね。

(アール)