【天体観測】11月に見頃の孤独な星とは?

冬至にむかって日没の時間がどんどん早まり、帰宅時には真っ暗になっていますよね。晴れた日の夜は秋の星座がよく見えるようになりました。夏の大三角形(ベガ・デネブ・アルタイル)が西に傾いて、南の空には秋の四辺形が主役の座に。
ですが秋の星座はちょっと地味…というと聞こえが悪いですが、1等星が輝く夏の星座と比べると、秋の1等星はたったひとつ。「みなみのうお座」のフォーマルハウトだけなんです。この星は「秋のひとつ星」と呼ばれています。

画像:国立天文台HP

フォーマルハウトとは、アラビア語で「大きな魚の口」という意味。「みなみのうお座」の口の部分に当たる星であることから、このように名付けられたのかもしれませんね。ちなみに日本ではこの星を「アキボシ」「フナボシ」「ヒトツボッサン」などと呼ぶ地方もあり、秋の夜空にたったひとつだけ明るく輝く星であることや魚にちなんだ名称がついています。

ハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、フォーマルハウトの周りにはチリの環があることがわかりました。そしてその後、アルマ望遠鏡の観測からこの環はフォーマルハウトの周りを公転している惑星によって形がキープされていることがわかりました。
地上から観ると明るい1つの光ですが、こうした事実があるなんて。地球から約25光年も離れた位置にある星のことが、望遠鏡の発達によって次々と解明されていく…とても興味深いですよね。

画像:国立天文台HP

周囲に明るい星が他にないことから、フォーマルハウトは比較的見つけやすい星です。フォーマルハウトは11月半ば頃には19時頃に南中し、南中時間が早まります。火星の南中時間も少しずつ早まっていくので、12月初旬に向けてこのふたつの星がほぼ同じ時間に南中するようになります。今年は火星の大接近で盛り上がりました。一番近づいているときほどではありませんが、今もピンク色に輝く火星を見ることは十分可能ですので、是非このふたつの星の饗宴をお見逃しなく!

(アール)