「平成30年7月豪雨」の気象状況と今後の対策について

過去に例を見ない「何十年に一度あるかないか」の事態として、ニュースで何度も報じられた「大雨特別警報」が、7月6日から8日にかけて11の府県に出されました。これほど多くの「大雨特別警報」は過去最多で、異常としか言いようのない状況だったことがわかります。

■未曾有の事態と歴史的な惨事

「特別警報」は、警報の発表基準をはるかに超える現象に対して発表され、予想される現象が特に異常であるため、重大な災害の起こるおそれが著しく大きい旨を警告する2013年に設置された新しい防災情報です。

気象庁のHPによると

東日本大震災では、気象庁は大津波警報などを発表しましたが、必ずしも住民の迅速な避難に繋がらなかった例がありました。また、平成23年台風第12号による大雨災害等においては、気象庁は警報により重大な災害への警戒を呼びかけたものの、災害発生の危険性が著しく高いことを有効に伝える手段がなく、関係市町村長による適時的確な避難勧告・指示の発令や、住民自らの迅速な避難行動に必ずしも結びつきませんでした。気象庁は、災害に対する気象庁の危機感を伝えるために、この「特別警報」を創設しました。

このように説明されています。
ライフレンジャーでも「3.11特集」として被災者のお話を伺ったり、4コマ漫画「たくやくんの防災塾」などで防災情報をお届けしております。こうした活動の中で気づいたことは

ご自身や大切な人が被災しないとなかなか実感がわかない

ということでした。また、時間が経つにつれて防災意識が薄れていくということにおいては、被災地でも問題視されているようでした。

テレビ報道でも繰り返し放送されていた「何十年に一度、あるかないかの事態」。「うちは大丈夫」「今まで何ともなかったから今回も大丈夫に違いない」ではなく、「もしかしたら今度ばかりは危ないかも」と意識を変えていただき、情報の収集と早めの行動、防災に対する意識を強めていただければと思います。

■「西日本豪雨」の気象背景について

今回の「平成30年7月豪雨」はどのような気象状況だったかについて、気象予報士と振り返ってみたいと思います。災害に発展してしまった豪雨の原因の大きな理由は“西〜東日本に停滞している梅雨前線の活動は、5日〜8日にかけて活発な状況が続いた”ことです。

天気図出典:ライフレンジャー

この状況が長く続いてしまった理由としては下記の2点があげられます。

① 梅雨前線に向かって、南から暖かく湿った空気(=豪雨をもたらす活発な雨雲のもとに水蒸気を大量に含んでいる)が流れ込み続け、梅雨前線が活発な状態を維持したこと

② 太平洋高気圧と気圧の谷の配置により、梅雨前線が停滞しやすい状況になってしまったことで、長引いた

出典:気象庁HP
参考:気象背景(7日時点 気象庁会見発表)

梅雨前線は活動を弱めながら北上するため、大雨は収まります。ですが、これまでの大雨によって地盤が緩んでいるため、土砂災害の発生に警戒が必要です。

また、台風8号の北上にともなって、西日本や東日本の太平洋側を中心に急な雨が降りやすい状態です。少しの雨でも土砂崩れなどがおきやすくなっている場所が多いことが予想されますので、引き続き厳重な警戒が必要です。

土砂災害警戒メッシュ情報(気象庁HPより抜粋)

また、西日本の各地で梅雨明けが発表されました。太平洋高気圧が張り出してくるため、大雨で被害に遭われた地域でも真夏日(30度以上になる日)となる地域が増えます。

被災や慣れない状況下で心身ともに疲労されていると思います。水分補給などをこまめに行うなど、体調管理には十分ご注意ください。

■「3D雨雲ウォッチ」を情報収集にご活用ください

これまで関東地方・近畿地方のみだった「3D雨雲ウォッチ」(無料)が、全国(一部島しょを除く)でお使いいただけるようになりました。雨を降らせる雲を、発生の早い段階からキャッチして立体的に見ることができます。

<参考画像>
地上では強い雨(黄色)が降り続け、上空の雨雲には豪雨(オレンジ)をもたらす雨粒が大量に発生している様子。

甚大な被害をもたらした大雨により、各所で地盤が緩んでいることが予想されます。これ以上被害を拡大しないために必要な情報として、急な雨を知るために役立てていただけましたら幸いです。