【3.11特集】東日本大震災発生から7年目を迎えるにあたって③ そして、未来へ・・・

福島県立医学大学で「リスク」に関する研究をされている村上准教授インタビュー第3弾をお送りします。数字から見えてくる「リスク」をどう考え、どのように備えるべきなのでしょうか。また、私達はどんな選択をするのがよいのでしょうか。

■「リスクを評価すること」について

リスクはたくさんあり、あるリスクを避けようとした行為が別のリスクの可能性を高めてしまうことがあります。これは僕らの日常生活の中にもたくさんあることです。
リスクを評価するということは、どのリスクがどの程度の大きさで、どうすればそれを最小限に食い止められるか今のうちにできることを増やしておく、将来のためにリスクを減らす計画を立てられる、ということです。

■リスクトレードオフは、難しい問題

リスクを評価して発表し、判断の材料にしていきたいと言っても、リスクが小さい方だけを選べば良いか、といえば、そうでもありません。何を選ぶかについては個人差もありますし、好みもあります。選ぶ人の過去の経験や知識によることもあります。リスクの捉え方そのものがさまざまにあって、実際はとても難しい問題です。僕の研究や学問の分野では、判断しやすい材料として数値を提供すること、参考にしていただけることを増やすこと。リスクは多岐にわたって存在するということも、知っておいて頂けたらと思います。僕の研究分野に関して言えば、研究や学問は社会に役立つためにあると思っています。

■今でも「備えている人」はどのような人?

そしてもう一つ、重要なデータがあります。震災前から定期的に、人の不安感や恐怖感、行動について行われたアンケートによると、地震への恐怖心は震災で一気に大きくなったものの、それは一時的なものですでに風化しつつあるということです。また、震災への備えや防災に関しても、被災地である福島でも減少しているという状況にあります。「備える人」はどんどん減っているのが現状です。
けれど7年経った今も、その思いが風化していない人がいます。ベタな言葉になりますが、「絆」を持った方々です。防災や備えは、いわば個人の問題というより「コミュニティ」なのではないかと思います。地域の中で支え合う・助け合う、いわゆる「つながり」を強めていくことが、僕らがするべきことではないかと思います。

地震への準備は、たくさんある大切なことのうちの一つです。地震に限らず、人生には、大切なことがたくさんあるでしょう。地震への備えだけではなく、周りで支えあって、みんながよいと思える社会を作ろうとすること、「生きたいと思う世界」に向かう中で、当たり前のように自然と防災やさまざまなリスクに備えることができるのが理想ではないかと思います。

(取材協力:福島県立医科大学 村上道夫准教授)

「常に防災や震災の備えについて考えて過ごす」のは、忙しい現代生活においては、なかなか難しいことかもしれません。情報をアップデートするにも時間が必要になります。ですが、震災が起こった日には、せめて防災やリスクについて少し目を向けたり考えたりする時間をいつもより多く持ってもよいのではないでしょうか。

(アール)