汗を拭くためだけのものではない!四季折々を「てぬぐい」で

ハンカチ、バンダナ、ミニタオル…猛暑だったこの夏、汗を拭くのに大いに役立ったことでしょう。まだ気温が高い日はあるものの、10月に入って夏は終わりというこの時期にこそ注目すべき「てぬぐい」の魅力についてお伝えしたいと思います。今回お話を伺ったのは、てぬぐい専門店「かまわぬ」の秋葉さんです。

■いわゆる「てぬぐい」っていったいどういうものなのでしょう?

てぬぐいは古来からずっと受け継がれてきている日用品のひとつです。サイズが一尺三尺(現在は33cm×90cm)の長方形の布で、昔は量り売りされていたんです。生活のあらゆるシーンで役立てられてきました。

手を拭くもので「てぬぐい」という名前がついていますが、「拭く」だけに使うのではなく、用途も幅広いんです。かさばらないし、コンパクトなのでハンカチ代わりに使っていただくのが一番ベーシックです。

身に着けるものとして、キッチンで、あるいは贈り物や引出物、お祝いのシーンでも活躍します。ちょっとした小物を包むこともできるのでラッピングにも。
ボトルだったら包んでそのまま差し上げたり、お弁当のときには包みを解いてランチョンマットにも。こうして様々な用途に使っていただけるのも、てぬぐいの魅力のひとつといえます。

■四季を通して活躍するのですね?

はい、もちろん夏が一番使われる時期ではあります。てぬぐいは乾きが早いのも特徴です。端っこを縫っておらず切りっぱなしの状態になっているので、洗濯してもすぐ乾くし、水や汚れが溜まりにくいんです。

古典模様だけではなく、現代のモチーフや動物の柄、季節の柄があるので、一枚壁に飾ったりしてもインテリアとしても楽しんでいただけます。てぬぐい一枚で部屋の印象も変えられますよ。絵だとなかなか取り替えにくいですが、てぬぐいだと気軽に雰囲気を変えることができると好評です。

また、秋冬などちょっと肌寒いときに首に巻いて寒さを緩和することもできます。一枚あるとないとではずいぶん違いますよね。肌触りも優しいですし、ファッションに合わせて柄をコーディネートしても楽しいと思います。

■ずいぶんたくさんの柄があるんですね。今年の人気の柄はどのようなものですか?

秋はお月見の柄「鳥獣戯画」のモチーフを使っているデザインが人気です。かまわぬでは季節ごとに鳥獣戯画のものを作っています。お正月には干支の柄なども人気ですね。縁起の良いもの…たとえば鶴や亀、鏡餅など年末年始のご挨拶に使われる方も多く、かまわぬは夏と冬に大きな山場を迎えます。

季節の花や紅葉などのモチーフを暖簾のようにして使うのもお勧めですね。暖簾にする場合は対にすることもできるんですよ。

■対にすることができるのはどうしてですか?

「かまわぬ」の手ぬぐいは注染(ちゅうせん)という方法で染めておりまして、両面が表、つまり裏表が全くないのが特徴です。いわゆるプリントではなく、液体の染料を使い、まず上から染料をかけて下までしっかり浸透させ、さらに裏返してもう一度裏からも染めているので完全に裏表に差がなく染められます。
プリントや顔料とは違って生地が硬くなることなく、風合いもよく柔らかいんです。

■何年くらい使えるものなのでしょう?

使い方にもよりますが、10年~20年お使いいただけると思います。染物なので基本は手洗いを勧めておりますが、洗えば洗うほどフカフカになって吸水性もよくなっていくんです。こうしててぬぐいが柔らかく変化していくことを、私達は「育てる」という言い方をしています。かまわぬのてぬぐいは綿100%の平織り。もともと綿(わた)を拠(よ)って作っているものなので、だんだん解けててきて肌触りがフカフカになっていくんですね。もちろん、何度も洗っていくうちに色も褪せていきますが、この変化も楽しんで長くお使いいただけたらと思います。


てぬぐいの用途がこんなに広いとは、初めて知りました。いつまでも続いた猛暑や、立て続けにやってくる台風…なんとなく四季がごちゃごちゃになっているように感じてしまいますが、春夏秋冬を身近なアイテムで楽しめるのは魅力的ですね。秋葉さん、どうもありがとうございました。

(アール)